悩殺熟女
吠える下半身

写真をクリックするとスチール大が御覧になれます

『悩殺熟女 吠える下半身』スチール1◆スタッフ◆製作:(株)旦々舎/提供:Xces Film/脚本:山崎邦紀『平成版阿部定 あんたが欲しい』より/監督:浜野佐知/撮影:下元哲/照明:上妻敏厚/編集:フィルム・クラフト/音響効果:中村佳央/助監督:松岡誠/増田庄吾/スチール:岡崎一隆/製作:鈴木静夫/録音:シネキャビン/現像:東映ラボ・テック/協力:日活撮影所〃東洋音響カモメ
◆キャスト◆阿川咲季:時任歩/百瀬夕佳:河野綾子/鈴村麻美:風間今日子/阿川幹朗:杉本まこと/大宮亮介:やまきよ/石田吉雄:樋渡剛/木暮雄司:中村英児
◆解説◆ 『定吉二人キリ』…真っ赤な血で太股に記された思い。左胸は刃物で刻まれた『定』の文字から血が疹む。根元から切断された男根。当時、世間では『世紀の猟奇事件』『血に笑う魔性の化身』『変態性の所業』など、色々と噂された昭和十年代。言論や思想の弾圧と共に男女の情痴事件が多発した。阿部定事件もそのうちの一つだ。定が31才の時だった。
 当時、料亭で仲居をしていた定は吉蔵という男と恋に落ちた。これ程の色男にはいまだかつて出会ったことがなく、心の底から愛しいと思えたのはこの男だけであった。人を殺しても、悪いことをしたとは思えず、これでやっと吉蔵は私だけのものになった。やっと二人きりになれた。愛欲の果て、永遠に自分のものにしてしまうのは殺してしまうしかないと…。
 定の心情は計り知れないものには違いなく、定には人を愛するということの探さと重さそして、純粋さをも教えられた。
 成人映画では欠かすことのできない『不倫』という行為は、欲求不満解消。淫乱な人妻。などに焦点を置いたものが多くこんなにも切なく辛い不倫。いや、恋愛を想像することができるだろうか?そして、こんなにも人を愛することができるのであろうか? 今、時代が変わり、平成という新しい時の中でも男と女の営みは決して変わることはない。しかし、時代と共に置き忘れた何かを探し出してもらいたい。
 監督浜野佐知がきっと伝えます。主演には澄んだ瞳が印象的な時任歩。阿部定を知る人も知らない人も見てもらいたい作品。乞御期待!
◆ストーリー◆ 咲季は、大学講『悩殺熟女 吠える下半身』スチール2師、阿川幹朗の、今時珍しい貞淑な妻だった。親の資産を継いだ幹朗は、趣味が半分の近代文学研究で大学の講師をする一方コインランドリーを経営して、日常の業務を咲季に任せていた。
 幹朗は咲季を、キャリアウーマン志向などない、平凡な女だと思っていたが、美しく控えめな妻を持っていることが内心、自慢でもあった。コインランドリーを任せることで、咲季が間違っても社会に出てみたいなどと思わないように、咲季の世界を限定していたとも言える。
 咲季自身も別になにかやりたいとは思わなかったが、家事とコインランドリーの毎日の中で、ふっと空虚な気分が横切ることもあった。しかし、夫も言うように、自分に特別な才能があるとも思えない。こんな風に過ぎていくのが人生なのだろうという気がした。
 コインランドリーを利用している客のなかに、どこか普通の若者のタイプとは違った青年がいた。孤独そうな横顔が印象に残ったが、彼はどこか人を拒絶しているようだった。
 幹朗の友人の一人に、ゲイバーを経営している大宮がいた。彼自身は本来ゲイでもなんでもなかったが、女遊びの果てに男とも遊ぶような、退廃的人物だった。幹朗も大宮も、それぞれ愛人を持ち、時には交換してスワップしたりしていたが、幹朗が妻の咲季を交換にだすことはなかった。それが大宮には不満でもあり、幹朗の実は保守的な性格を現していると思っていた。大宮は、内心、咲季に惹か『悩殺熟女 吠える下半身』スチール3れていたのである。
 ある夜、大宮がゲイの石田吉雄を連れ、幹朗宅に遊びにきた。吉雄を見て咲季は驚く。コイン・ランドリーの常連である、あの孤独な青年だった。大宮は、吉雄を売り専ボーイと紹介し、普段は男の客を相手にしているが、時には女に買われることもあると言う。咲季のような貞淑な妻も、時には彼のような男娼と遊んでみてはどうかと、けしかける。
 珍しく動揺した咲季を見て、妙な嫉妬を覚えた幹朗は、吉雄にちょっかいを出す。ひとつ自分と遊んでみないか。
 何事も経験だし、文学研究にも役立つはずだ。きみは男と女とどっちが良い?
 吉雄はぽつぽつと、できるなら女性とは寝たくないが、生活のために止むなく買われるのが淋しいと言う。その答えを引き出し、満足する幹朗。自分ながら、咲季に対する子供っぽい意地悪だったと思う。
 大宮たちが帰った後も、なぜか咲季の心は騒ぐ。そんな咲季を見つめる幹朗。まさか売り専ボーイに心惹かれているわけでもないだろうが、いつもの妻とはどこか様子が違う。
 咲季は夜遅く、コインランドリーを閉めにいくと、吉雄が洗濯していた。閉店時間と知り、あわててやめようとする吉雄だが、咲季は乾燥が終わるまで構わないと言う。黙って、回転する乾燥機を見つめる二人。そこに幹朗が帰ってきて、吉雄が常連客であったことを初めて知る。
 妻はなぜ先日、それを言わなかったのか?幹朗は、不意に吉雄に、明日デートしようと言い出し、約束する。
 幹朗は、愛人の夕佳と一緒に吉雄と会い、夕佳と吉雄にセックスさせて、その様子をポラロイド写真に撮る。そして、家に帰ると、吉雄にはすっぽかされた、大宮の店でこんなものをもらったと言って、ポラを見せる。ああいう男娼ぐらい信用できないものはないから、顔を合わせても話さない方がいいと言う幹朗。『悩殺熟女 吠える下半身』スチール4
 写真を見た咲季は、吉雄とセックスしている女が、幹朗の学生の一人であることを知っていた。あるいは彼女は、幹朗とも関係があるのかも知れないと思ったが、不思議と嫉妬は感じない。
 ある夜、吉雄が洗濯していると、咲季が入ってきて、じっと彼を見つめると、いきなりキスをする。咲李自身にも、思いがけない行動だったが、さらに彼のズボンを下ろすと、荒々しくフェラチオを始める。
 咲季のなかの動物的な衝動が、彼女を突き動かしていた。吉雄は、犯されているような感覚に陥り、声が思わず出そうになるのを必死にこらえる。咲季は、明日の午前中に、自分の家に来てと言って、去る。呆然と残される吉雄。
 咲季も、自分が今やったことが信じられないような思いで、その一夜を過ごす。何かが咲季の中で変わりつつあった。翌日、吉雄がやってくると、強引にセックスする咲季。吉雄もまた、初めて女に惹かれている自分に煩悶し、自分で自分の首を絞める。それを見た咲季は、セックスしながら、換わって吉雄の首を絞める。そのことによって、強烈なエクスタシーが二人を襲った。
 咲季は吉雄の女性的な部分、吉雄は咲季の隠された男性的な部分に惹かれたのかもしれない。また、吉雄が思わず自分で自分の首を絞めたのは、彼の厭世的な気分が、女とセックスすることで増幅されたと見ることもてきる
 幹朗は自分の妻が、どこか変ったように感じたが、それがまさかゲイの青年とのセックスにあったとは思わない。
 しかし、ふと別人のような雰囲気を、妻に感じることが増えた。
 咲季と吉雄は、まっしぐらに深みにはまっていった。首を絞めて、忘我の状態に陥るのも徐々にエスカレートする。吉雄が失神し、意識を取り戻すのが遅れたときには、咲季も恐れを感じたが、死ぬことは恐くないと吉雄が言う。性的少数者として辛い人生を送ってきた吉雄には、厭世的な翳りが付きまとっていた。
 ついに幹朗が発見するに至る。ゲイと妻の不倫!信じられない幹朗は、半狂乱になり、咲季は吉雄とともに家を出る。見上げると、青い空が広がっていた。こんな空を見るのは、いつ以来のことだろう。
 ホテルでセックスする二人。行きどころのない咲季だったが、家を出ることで精神的には解放されていた。吉雄は安定した妻の座を捨てて、新しい世界を開いてくれた咲季に感謝する。激しいセックスの中で、吉雄は首を絞められ、最高のエクスタシーの中で死ぬ。吉雄の陰茎は、咲季の体の中で屹立したままだ。
 咲季には、人を殺したという実感はなく、吉雄を幸福の絶頂のうちに見送ることができたと思う。勃起したままの陰茎がいとおしい。吉雄の人生は、この陰茎が向かう対象に迷い、悩んだ一生だったのだと思うと吉雄の分身のようにも感じられる。
 吉雄に別れを告げ、立ち上がった咲季の手には、切断された陰茎が握られていた。ホテルを出る咲季のうえには、また青空がある。