徳川の女帝
大奥

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◆スタッフ◆プロデューサー:藤浦敦/脚本:関本郁夫・高山由紀子・志村正浩/監督:関本郁夫/撮影:水野尾信正/照明:内田勝成/整音:福島信雅/録音:佐藤泰博/美術:西亥一郎/編集:『徳川の女帝 大奥』スチール1奥原好幸/音楽:津島利章/監督補:北村武司/助監督:塚田義博/製作担当:秋田一郎/企画担当:小松裕司/製作:株式会社にっかつ/配給…シネ・ロッポニカ株式会社
◆キャスト◆お美代:竹井みどり/花沢:西川峰子/藤乃:吉原緑里/若狭:白木万理/滝本:白石奈緒美/松波:服部妙子/おゆう:川崎葉子/お鈴:宮内ルリ子/お楽:麻生かおり/お蘭:長坂しほり/お初:池谷美香/お菊:新井今日子/お文:畑中葉子/楓:和地真智子/お芳:根本里生子/桔梗:中西典子/お春:江崎有美/長寿:ただのあっ子/栄喜:西美子/日啓:浜田晃/常:菅原千加代/日啓の女:飯島明子/板倉内膳匠:田中明夫/茂子:三ッ矢歌子/家斉:成田三樹夫/中野清茂:夏八木勲
◆解説◆ 時は文化・文政と呼ばれる華やかなりし時代。徳川歴代将軍の中で最も豪奪な生活を送ったという第十一代将軍家斉の御世。当昭の大奥は、その絢爛豪華な装いとは裏腹に、権謀術数の渦巻く、女同士の戦場であった。
 この作品は、年幼くして大奥の潮流に投げ込まれたお美代が、将軍家斉の寵愛を得て、他の女達との謀略のめぐらし合いの末に、女の戦に勝ち抜いてゆく姿を描いた一代絵巻である。
 監督は、「女帝」「クレージーボーイズ」の閑本郁夫。
 出演は、主人公のお美代に、「キャバレー日記」以来久々にっかつ登場の竹井みどり。大奥お年寄・花沢に、「吉原炎上」「肉体の門」などで、最近演技派女優としての躍進めざましい西川峰子。藤乃役に『徳川の女帝 大奥』スチール2は、子役時代よりドラマ、CMで活躍し、この作品を機に本格派女優をめざす吉原緑里。
 一方の男優陣は、お美代の運命の糸をにぎる旗本・中野役に夏八木勲、将軍家斉役に成田三樹夫など個性派揃い。
◆ストーリー◆ 時は徳川十一代将軍家斉の御世。文化・文政と呼ばれり華やかなりし時代。
 仏性寺の住職日啓の娘お美代は、直参旗本中野清茂の目に止まり、養女として迎えられる。それから一年、お美代は中野のもとで幸せな日々を送るが、お美代の中野に対する愛情は、いつしか男性に対するそれとなっていた。だが、中野はお美代に大奥行きを命じる。もともと中野は、大奥お年寄花沢と情を交わす間柄で、二人して中野家から将軍付中臈を出すことを目論んでいたのだ。
 文化三年初夏、お美代は大奥へ上がった。当時の大奥で将軍家斉の寵を一身に受けていたのは、お手付中臈・藤乃であった。毎夜毎夜、家斉の寝所に呼ばれる藤乃に対し、他の大奥の女達は羨望と妬みを抱いていた。藤乃の自信に満ちた姿を見ながら、花沢がお美代に言う。「女の戦いに勝った者だけがあの白無垢を着られるのじゃ。あの誉れの姿、ようく見ておけ」
 ある晩、花沢の手回しにより、お美代は藤乃のお添寝役を務めることになる。じっと静かに背を向け横臥するお美代の姿に、藤乃との行為の最中の家斉は気になるもめを感じ、その手を止めてしまう。そしてその翌晩、とうとうお美代が家斉の寝所に呼ばれることになる。家斉は、お美代の不思議な床振りに大いに満足する。
 だが、家斉を取られた藤乃がただ黙って見ているはずがなかった。家斉のお気に入りとなったお美代が、その翌晩も身仕度を整えて待っていると、お添寝役のお文が行方知れずになってしまう。これは、『徳川の女帝 大奥』スチール3藤乃一派の謀略で、結局その晩は藤乃が家斉の寝所へ行くことになる。お美代は、大奥での女の戦さの怖さを痛感し、その戦さに勝ち抜く決心をする。
 春のある夜、庭に家斉が慈しむ牡丹の花が満開に咲き競う中、大奥の女達が一同に会しての酒宴が催された。その席上、家斉の提案で『贅沢競べ』が行なわれることになった。女たちが次々と贅沢な望みを語る中で、家斉に指名されたお美代は、家斉が大事にしている牡丹の花を一本ポキリと折る。「この世で一番美しいものを、この手で壊すことを、お美代は一番の贅沢と存じます」その夜から、再びお美代が家斉の寝所に呼ばれることとなった。お美代が、家斉の寵を一身に集めたことによって、養父の中野も石高が増え、出世をした。だが、またしてもお美代に対する卑劣な陰謀が。家斉の御台所茂子の愛猫ねねが、お美代の長局の庭に埋められて死んでいたのだ。お美代は必死になって潔白を訴えるが、聞き入れられない。そこへ、話を聞いた中野が死装束姿で家斉の前に現われ、お美代の代わりに自分が腹を切って詫びると迫る。さすがの家斉もあわてて中野を止め、茂子にお美代を許すように説き、事無きを得た。
 その頃、お美代は家斉の子を身籠っていた。中野も花沢も大喜びだが、お美代は懐妊中家斉の寵を受けられないことを不安に思う。その予想が当たり、大奥に年若いおゆうが現われ、家斉の寵愛を奪ってしまう。お美代は無事に和子を産み、再び家斉との契りを望むが、おゆうが自分と同じく、中野の養女として花沢が後楯となって大奥に送られた娘だと知り、愕然とする。そして、お美代に続き、おゆうも家斉の子を宿す。お美代は、中野や花沢に事の真意を問い正すが、二人ともお美代を冷たくあしらう。お美代の心に復讐心が宿る。お美代は、実父日啓から班猫の薬を手に入れ、茶の中に入れておゆうに飲ませる。その結果、おゆうは流産した上に発狂する。そして、その薬の紙袋が花沢の長局の茶箪笥から見つかった……。
 罪をかぶせられた花沢は怒り狂い、お美代や中野に詰め寄るが、逆に二人が相思相愛であることを知らされ、失望して自害する。
 とある晩、大奥の大広間ではお美代主催の八朔の祝が執り行なわれていた。その席で、お美代は家斉から養父中野が隠居を申し出たことを聞かされる。お美代は許しを得て家に帰り、中『徳川の女帝 大奥』スチール4野から真意を聞く。お美代は、三十歳を目前にしていた。大奥の女は、三十になるとお褥辞退を申し出るのがしきたりになっている。三十を過ぎてまで寝所勤めを続けると、好女と蔑まれるからだ。中野は、お美代と共に自分も戦を終わらせることが、せめてものお美代への償いであると考えていたのだ。その晩、二人はお互いの愛を確認し合い、結ばれる。しかし、お美代は三十を過ぎてもお褥辞退をしないことを決意し、中野のもとを去る。床の間に、決意の印とでも言うべき一房の黒髪を残して。
 徳川第十一代将軍家斉は、天保十二年六十九歳で逝去するが、お美代はその死に至るまで、決して家斉の褥を辞退することなく、その寵愛をほしいままにしたと言う。時にお美代、四十六歳であった。