花と蛇
ー飼育篇ー

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◆スタッフ◆製作・配給:(株)にっかつ/プロデューサー:奥村幸士/原作:団鬼六『富士見文庫刊』/脚本:掛礼昌裕/監督:西村昭吾郎/撮影:野田悌男/照明:田島武志/録音:酒匂芳郎/美術:和田洋/編集:奥原康晴/助監督:北村武司/製作担当者:秋田一郎/宣伝:東康彦
◆キャスト◆遠藤静子(25)美貌の夫人:小川美那子/藤原千代(25)遠山家家政婦矢生有里村瀬美津子(17)静子の弟子女高生:舵川まり子(新人)/村本勝彦(35)顧問弁護士坂元貞美遠山隆義(53)遠山商事社長永井秀明田代剛史(48)田代運送社長港雄一吉田(30)池田竜ザブ(24)横溝貴之ジョージ(23)佐藤信一
◆解  説◆
 八十四年九月の「団鬼六・縄責め」八十五年一月の「団鬼六・緊縛卍責め」等、公開のたびに大反響を呼んだ鬼六もの。さて、今回映画化された「花と蛇 飼育篇」は七十四年「花と蛇」、昨年八月の「花と蛇 地獄篇」に続いてシリーズ三度目の映画化である。
 そもそも、「花と蛇」は昭和三十八年に「奇譚クラブ」誌上で発表されて以来、名実ともに団鬼六の代表作、昨年角川書店から文庫化されるにおよび、単なる官能小説の域を超え日本を代表する国民文学として広範な支持を確立した。
 さて、「花と蛇」シリーズの、主演=監督コンビも谷ナオミ=小沼勝、麻生かおり=西村昭五郎をへて、今回は鬼六もの初挑戦の小川美那子に前作同様西村昭五郎が演技をつけた。清楚で美貌の深窓の令夫人・静子役は、まさに小川美那子のはまり役と、大きな期待がよせられている。また共演の千代役に、三浦和義被告とのSMプレイで話題をまいた矢生有里があたり、私生活での経験を生かした迫力あるSの演技でスクリーンをひきしめている。
◆ストーリー◆
 人気もまばらな冬の並木道を遠山商事の社長夫人・静子(25)が小走りにやってくる。彼女は何者かが自分をつけてくるのに気づいて、息をきらしながら、やっとのことで自宅の庭内にかけ込んだ。門前を掃除していた女中の藤原千代(25)が無表情に声をかける。「奥さまお帰りなさいませ。どうかなさいましたか。」門前にしばらく止って中をうかがっていた黒塗りの車が走り去っていく。
 都心のホテルの表、車から次々と降りてくる盛装の男女たち。静子の夫、遠山隆義(53)も今、高級車から降りて来たところだ。
 「社長…ちょっとお話が…」遠山の前に駆けよったのはジャンパー姿の田代剛史(48)(田代運送経営者)である。「再契約の件、お考え直して頂けませんでしょうか。」力なく、くいさがる田代を遠山は冷く押しのけ、罵倒して立ち去った。
 今日は静子の25才の誕生日。書道の愛弟子村瀬美津子、遠山商事の顧問弁護士・杉本勝彦も交じえて華やかにパーティーが行われている。しかしこの日は千代もまた25才の誕生日、魚座で同じ星のもとに生まれたのに、あまりにもかけ離れた二人の境遇である。静子を見詰める千代の視線は嫉妬と羨望の炎に燃えていた。 その夜、遅く帰って来た遠山は静子とベッドルームに入ると激しく彼女を愛撫しはじめた。「静子、君は素晴らしい女だ。だがどうしてそんなに羞恥心が強いんだ。昔の恋人、杉本のことがまだ忘れられないのか。」その寝室の前で息をひそめて立っていた千代を、不意に杉本が書斎の中に引き込む。浴衣の胸をいきなり開き乳房を吸う杉本に、千代は黙ってされるがままだ。
 翌日、遠山邸の和室では静子が美津子に稽古をつけている。そこにお茶を持って入って来た千代だが不注意から墨汁を倒し美津子の書を汚してしまう。「千代さん、気をつけてちょうだい!お習字の時はくれぐれも粗相のないようにって言ってあるでしょう。」静子のきびしい叱責に千代はみじめにい這いつくばって何度も頭を畳にすりつけた。千代と美津子が去ったあと一人で書に熱中する静子。そこにそっと一人って来た杉本は、静子にいまでも愛していることを打ちあける。杉本は遠山の書生として大学卒業までめんどうをみてもらい、現在でも遠山の顧問弁護士として働いている。もともと静子は杉本が自分の婚約者として遠山に紹介したのがキッカケで遠山の後妻におさまったのだが、静子には杉本が保身のために自分を遠山にさし出したとしか思えなかった。一度だけの関係をせまる杉本を静子は「めったなことをなさると許しません。私は遠山の妻です。」と払いのける。杉本は敗北感と屈辱に唇を噛みしめた。
 上野の都立美術館に書道の展覧会に出かけた静子はトイレでいきなり見知らぬ男から鳩尾を突きあげられ気を失い、そのまま車にのせられてつれ去られてしまう。気のついた静子は倉庫のような暗がりにいた。がらんとした床に浴槽やダブルベッド、檻などがおかれ、壁には鞭や縄などの責め道具が見える。突然、眩しい白光が静子の目を射る。周囲に配置されたライトやビデオカメラの脇から吉田と田代が歩いてくる。吉田は怯える静子の帯を無理矢理ほどくと「往生際が悪いぜ。お前を裏ビデオのスターにしてやる。」と叫んだ。「怨むなら御主人を怨みな。」静子の絶叫の中、田代は迪送を続ける。やがてぐったりとなった静子は両足をロープで開げられ、剃刀を股間にあてがわれる。剃毛責めにあう自らの姿を鏡に写され、静子は屈辱と絶望の淵に沈んでいった。
 翌朝、和代に遠山商事との再契約の仲介をたのまれていた杉本が田代運送の事務所を訪れるが、杉本はそこで・全身緊縛され天井からさかさ吊りにされた静子の姿を見せられ思わず絶句してしまう。最初は田代を非難する杉本だが、静子のあられもない姿を目のあたりにして肉欲の虜となってしまう。杉本は迷った末、一度遠山邸に戻るのだが、やはりその夜、一人倉庫にしのび込んで静子を犯そうとする。しかし静子の毅然とした態度に一瞬たじろいだ杉本の隙をついて、静子は表に逃げ出した。川沿いの道を裸足でかけぬけた静子は電話ボックスにとび込むと遠山邸に助けを求めた。「美津子さんね、お願い早く助けに来て。」やっとのことで場所をつたえた静子だが再び吉田達につかまってしまう。
 一方、美津子は助手席に千代を乗せ静子のもとに疾走していた。しかしやがて目的地も近くなった時、突然千代に剃刀をつきつけられる。千代はそのまま車を田代運送につけるよう美津子に叩命じた。倉庫に引きずり込まれた美津子は、腰巻ひとつでエビの様に檻に押し込まれた静子の目の前で全裸に剥かれる。
 二人はその夜、田代や吉田から繰り返し辱しめを受け、特に静子は千代と杉本による情容赦ない責めにも耐えねばならなかった。
 翌朝、‥田代は遠山を電話で呼びつけた。昨夜までの倉庫はステージとして装飾され、多くの客が裏ビデオスターの御披露目会というふれ込みで招待されていた。遠山をはじめ多くの男達の見守るなか、スポットの中に姿をあらわしたのは全裸の静子と美津子である。愕然とする遠山の前で、二人は千代により股間に筆を押し込まれ、大きな画仙紙に文字を書きあげるショーを披露し始めた。千代はそんな二人をギラギラ光る目で見下しながら、罵声を浴びせる。「お習字のときは、くれぐれも粗相のないように言ってあったろう。」二人は立ちはだかった千代の足に舌を這わせる。蒼白になって震える遠山に田代が声を掛けた。
 「調教ビデオ一万本、即金で二億だ。」ステージの上は、いつしか杉本と静子の本番ショーに変わり、男の激しい突きに思わず体をのけぞらせた静子の口からもれる絶頂の叫びが長く尾を引いてこだましていた…。